労働法ポイント解説
労働基準法について
労働契約・雇用契約
賃金(給与・賞与)
労働時間・三六協定
残業手当
休日・休憩
年次有給休暇
退職・解雇
懲戒処分
試用期間
労働基準監督署
社会保険・労働保険 |
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1.労働基準監督官の権限
(労働基準監督官の権限)
第101条
労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
2 前項の場合において、労働基準監督官は、その身分を証明する証票を携帯しなければならない。
第102条
労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法 に規定する司法警察官の職務を行う。
このように、労働基準監督官については権限が明文化されています。
2.労働基準監督官の調査原因
監督官の立ち入り、調査は下記の3つが要因となるケースが殆どを占めます。
①内部告発、個別相談
社員が会社と話をしても解決しないため、労働基準監督署へ出向き、内情を話し告発したのが発端になるケースです。 後で不利益な取り扱いを受けることを警戒して匿名で申告されることもあります。
社員本人だけでなく、その家族が告発するケースもあります。
労働基準監督署からの呼び出しというケースや、監督官が突然会社にやってくる場合もあります。
②業種ごとの調査
時期、年度などにより、業種・業界を絞って調査をするケースです。サービス残業が多い業界や社員からの個別相談が多い業界等が抽出されます。
③再調査
以前、調査や指導を行なった会社に対して、指導・約束した内容がしっかり守られているかを調査する為に再調査を行ないます。
今は、過重労働(長時間労働)による過労死認定も増え、大きな社会問題となっています。
サービス残業が当たり前になっているような業界は、いつ監督官の調査を受けても不思議ではありません。
3.調査の流れ、内容について
いざ調査、ということになった場合、下記のような流れで調査は行なわれます。
①調査
書類の提出を求められ、事情聴取が行なわれます。
提出する書類は、ケースバイケースですがほぼ下記の通りです。
・就業規則(賃金規定や退職金規程等、付属する規程も含みます)
・三六協定
・出勤簿(社員の出勤状況、就業時間、残業時間が記録されているもの)
・賃金台帳(社員各人の毎月の給与、賞与の支払が記録されているもの)
・定期健康診断の個人別のデータ
②是正勧告
労働の実態が、労働基準法等に違反していると判断されれば、「是正勧告書」の受領によって指導を受けることになります。
また、サービス残業や賃金の未払い等が実態として把握された場合には、最大で過去2年に遡って支払が命じられます。
③報告
上記までの指導・命令を受けた後の改善状況、未払い賃金等の支払いを書面、証拠を提出することによって報告します。
4.調査、是正勧告を受けることになったら
上記の第102条の条文にもある通り、警察官と同じように逮捕、送検する権限を持っています。
しかし、実際に逮捕されるケースは殆どありません。実態を素直に受け止め、誠意を持った対応をすることで調査は乗り切れ、会社も良くなります。
是正勧告を受けたら、内容に基づいて改善計画を立て、是正報告書を期限までに提出します。
虚偽の内容を記載することなく、誠実に対応しなければなりません。
虚偽の内容を書いて後で発覚した場合にはそれこそ取り返しのつかないことになります。
5.労働者の申告の権利について
(監督機関に対する申告)
第104条
事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
このように、違法行為に対して労働者から労働基準監督署への申告は法律で明文化されています。申告した労働者に対して解雇、懲戒処分、人事上の不利益な取り扱いは許されていません。
6.申告機関について
職場のトラブルは全て労働基準監督署が対応するわけではありません。
行政官庁ごとに、担当が分かれています。
①労働基準監督署
労働基準法、労働衛生安全法違反に対する申告機関です。
しかし、例えば「セクハラを受けた」「育児休業を取らせてくれない」といった別法律に規定されている問題は、ここでは取り扱いません。
②ハローワーク(職業安定所)
雇用保険法、労働者派遣法等に関する申告機関です。
③都道府県労働局雇用均等室
セクハラ、育児休業に関する違反案件等、会社(又は会社の男性労働者)と女性労働者のトラブルを扱います。
なお、最近では女性から男性に対するセクハラも問題になっており、同じくここで取り扱います。
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